預金構成の変化が銀行の現金・準備預金保有行動に与える影響
-銀行の財務パネルデータによる実証分析-

内野 泰助

Janurary 2009

Abstract

日本の貨幣乗数は1990 年代に低下した。この背景には、非銀行部門の現金選好の高まりと、銀行部門の現金・準備預金保有の増大がある。本稿は後者に関連して、銀行の負債サイドのリスクとして流動性預金比率(預金に占める流動性預金の割合)の上昇が銀行の現金・準備預金保有行動に与える影響を検証するために、1993 年から2000 年までの国内銀行130 行の財務パネルデータを用いて、Ogawa(2008)に従った対数線形の流動性需要関数を推定した。本稿の分析によって、(1)預金構成を示す変数が現金・準備預金保有量に正で有意な影響を与えていること、(2) 流動性預金比率の上昇が流動性保有量に与える影響は、不良債権や低金利など従来指摘されてきた要因よりも強いこと、(3)預金者行動によって生じうる内生性を考慮した推定においても上記の結果が得られること、が明らかになり、流動性預金比率の上昇が預金流出リスクを高め、事前の流動性保有の便益を高めるという仮説を支持しうる実証結果を得た。

Full text

PDF Download (PDF: 512KB)