常用・非正規労働者の諸相

Ryo Kambayashi

March 2010

Abstract

本稿では 1982 年から2007 年までの就業構造基本調査を用いて、日本の労働市場における非正規化の一側面を追った。その結果、まとめられるのは次のような事実である。第一に、雇用形態上は常用であるが、呼称上は非正規であるという労働者が特に1990 年代後半以降急増してきている。第二に、この傾向は若年、定年退職後の高齢者、女性で顕著で、就職あるいは転職時の選択肢として常用・非正規形態が拡大していることに起因していると考えられる。第三に、これらの常用・非正規形態の拡大は、常用・正規就業の縮小と単純に対応するわけではない。第四に、以上の観察結果は、契約形態上の違いと労働条件や訓練インセンティブとの関連が、呼称上の違いほど強くないことからも確かめられた。これらの観察結果より、日本の労働市場においては雇用契約形態(すなわち雇用契約期間の長短)よりは、職場での呼称がキャリアに重大な影響を及ぼしている可能性が示唆される。

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