家計の資産選択行動における学歴効果:
逐次クロスセクションデータによる実証分析

北村 行伸
内野 泰助

August 2010

Abstract

本稿は、家計の資産選択行動における固定情報コストの存在を明らかにするために、家計の逐次クロスセクションデータ(日経RADAR)を利用して、危険資産保有決定に学歴が与える影響について詳細な分析を行った。具体的には、Fairlie (1999, 2005)によって非線形モデルに応用されたBlinder-Oaxaca 法を適用し、大学・大学院卒の世帯主を持つ家計とそれ以外の家計間の危険資産保有確率格差を要因分解した。本稿の実証分析により、(1) 世帯主が大卒・大学院卒である家計の危険資産保有割合は35%に達する一方、それ以外の家計は18%にとどまること、(2) 両者の格差のうち、属性の違いによって説明可能な部分は約3割から5割に留まること、(3) 属性の違いによって説明される部分の大半が金融資産水準、所得水準および世帯主の勤務先規模によって説明されること、が明らかになった。この結果は、家計の危険資産保有決定において、金融知識を背景とした参加コストが存在することを示唆するものと結論付けられる。

Full text

PDF Download (PDF: 515KB)