日本企業の流動性資産保有に関する実証研究
上場企業の財務データを用いたパネル分析

堀 敬一
安藤 浩一
齊藤 誠

August 2009

Abstract

本論文は、日本の上場企業の財務諸表から構築したパネル・データを用いて、1980年代から2000年代前半にかけて企業の流動性資産(現預金)の保有行動がどのように変化してきたのかを実証的に検証している。1990年代までは一貫して、成長性の高い企業が流動性資産を保有しようとする行動が観察される。1990年代半ばまでは、製造業を中心として銀行借入や企業間信用などの資金調達手段が流動性資産保有と強い代替関係にあったが、金融危機を含む1990年代後半には、そうした代替関係が弱まった。金融緩和基調となった2000年代前半には、それまで流動性資産保有に影響を与えていた要因が、もはや強い影響を与えなくなった。また、1980年代から1990年代にかけての推計結果では、銀行の影響力やメインバンク制度の役割の変化が明らかにされている。

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