知識資本モデルの再推定:
日本と米国の多国籍企業データの結果

田中清泰

September 2009

Abstract

本稿は、海外直接投資における海外市場のアクセスと生産費用削減の決定要因を分析するために、James Markusen(2002)の知識資本モデルを再推定する。既存研究に対して、1989-2002年の期間で日本と米国企業の海外現地法人の売上データを統合した点、また、推定のバイアスを緩和するために推定モデルの説明変数を大幅に拡張して、システムGMMによる推定方法を採用した点が新しい。日本と米国企業のサンプルを用いた推定の結果、海外市場のアクセスも生産費用削減も海外生産のパターンを説明する重要な要因であった。しかしながら、日本企業のサンプルのみ推定すると、海外生産は労働費用削減の動機に強く影響されていた。一方、米国企業のサンプルに限定すると、海外市場のアクセスが海外生産の主要な要因であった。つまり、市場アクセスと生産費用の経済的動機を組込んだ知識資本モデルの推定には、海外生産の決定要因の多様性が重要である事を示唆している。

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