本稿では、東証の透明性向上に関する改革の効果について実証的な検証を行う。東証は、2000年代に入り気配情報の投資家に対する公開幅を増加させる改革を行っている。2003年には、従来上下3本気配のみ公開していた気配情報を上下5本気配の公開に増やしている。これらの改革は、世界各地の証券取引所において着手されているものの、その効果については相反する結果が得られており、実証的なコンセンサスが得られていない。本稿では、2003年の東証の透明性を向上させる改革が、証券市場の質を高めたのかどうかについて、流動性と市場における投資家間の非対称情報に注目した分析を行う。日経225構成銘柄について、流動性の代理変数であるデプスに関しては有意な結果は得られなかったものの、その他の変数に関しては、流動性を高め投資家間の非対称情報の程度を緩和するという実証結果が得られた。この結果は、東証の改革には一定の効果があったことを示している。