前稿に引き続き、戦後の農作物、全期間にわたる畜産業、林業、水産業の生産統計を整備、補完し、その過程において付加価値額の推計が試みられた。
農作物については戦前期と同じく、付加価値率の選択以外にフィリピン統計年鑑と大きく異なる結果とはならなかった。残る分野に対しては、独自の方法により生産量、生産額の統計を作成したが、総体的に戦前戦後を通した付加価値額の趨勢は、主要食糧農産物の動向に大きく左右されることがわかった。結果として我々の推計は、比較対象であるHooley 推計、フィリピン統計年鑑よりも低い水準となった。
統計資料の検討を通して見えてきたフィリピンの第一次産業部門における生産統計、付加価値額計算における留意点は、掲載された統計の過少推計問題と、情報収集時の各統計項目に対する概念にある。特に後者に関して、戦前期に製造業と密接な関係を持つ農作物は、農業と製造業のどちらの立場から統計がとられたかに依存して、各データ項目の内容に対する解釈が変わる可能性がある。