本稿では、OJTとOff-JTを取り上げて、企業内訓練を受講している非正規社員とは誰かを明らかにし、非正規社員にとって企業内訓練の受講が賃金や職業能力の向上にプラスの効果があるのかを、労働者マイクロデータを用いた計量分析を行い検証する。第1に、非正規社員として働いている人のうち、期待勤続期間が長い人はOJT受講確率が高く、またフルタイム勤務の非正規社員は35時間未満のパートタイム勤務の非正規社員よりもOff-JT受講確率が高くなる。つまり、非正規社員のなかでも正規社員に近い働き方をしている人が企業内訓練を受けやすい傾向がうかがえる。第2に、企業内訓練を受講することで、仕事能力に関する非正規社員の自己評価が高まることが示され、また企業内訓練の受講と生産性の間には、統計的に有意に相関関係があることを示す結果が得られた。しかしながら、訓練受講の賃金引き上げ効果は確認されなかった。第3に、OJTとOff-JTともに賃金引き上げ効果は観察されないものの、企業内訓練の受講は正社員への転換確率を高めることが明らかにされた。