両立支援制度が有配偶男性の家事・育児時間に与える影響
-労働組合員調査を用いて-

坂本和靖

October 2010

Abstract

本稿では、「職業環境と少子化の関連性に関する調査」(2007年11月実施)の夫妻票(本人票と配偶者票)と企業票を用いて、夫・妻の就業先の両立支援制度が、それぞれの家事・育児時間に与える影響について分析した。まず、記述統計量の比較をすると、夫・妻ともに、制度が存在するというだけでは、家事・育児時間に影響がみられなかったが、夫の制度利用の経験がある場合、また制度が本人を含めた周囲の就業者において利用できる環境にある場合、家事・育児時間が長くなることが確認された(1時間強~2時間弱/週)。また、妻の場合、本人を含めた周囲の利用環境、本人自身の利用経験がある場合、家事・育児時間が長い結果が得られた。

次に、記述統計量による比較が頑健なものかどうか、Selection Bias(家事参加に積極的な者は、両立支援制度が充実している企業に入社する、あるいは組合員は時間外労働が制限されているため、制度の有無にかかわらず、家族と過ごす時間が長く、家事育児に参加可能となる)を考慮するため、Propensity Score Matching 法による検証を行った(夫に限定)。その結果、「半日単位の年次休暇の取得」、「深夜勤務の免除」、「始業・就業時刻の繰上げ繰り下げ」において、正の効果(2時間強~3時間弱/週)が確認された。

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