本論文では、解放前の韓国鉱業生産を検討すること(生産額および付加価値額の推計)を目的として、主に『朝鮮総督府統計年報』の「鉱産額」統計(1911~36 年)にみられる数値の検討をおこなった。併せて『昭和16 年朝鮮鉱業の趨勢』にみられる数値を利用して1937~41 年についての検討を加えた。
同時期の「煉炭」および「砂利」についても同様の検討がなされた。
さらに、『韓国統計年鑑』の数値を利用して、解放後の生産統計に接続する試みが検討された。
これらの検討は以下の要領でおこなわれた。
(1)年次データである『朝鮮総督府統計年報』を時系列に組み換え、道別、品目別に実効単価(生産金額÷生産数量で計算)を観察することで数値の補間や修正をおこなった(データクリーニング作業)。製造業の場合と比較すると、「鉱産額」統計では、実効単価は概ね安定して推移しており、補間や修正が必要とされる箇所は尐ないことが確認された。
(2)解放後の韓国データとの接続性を考慮して、上記作業をおこなったデータをもとに、各品目を国際標準産業分類の中分類別に合計し、南北分割を試みた。この結果から、解放前の鉱産物の多くが「韓国南部」に偏っていた事実が確認された。
(3)「煉炭」(「林業」統計)および「砂利」(「工産物」統計)についても数値の検討をおこなった。
(4)『朝鮮鉱業の趨勢』のデータを利用して1937~41年の道別生産額、付加価値額の推計がおこなわれた。(ただし、『朝鮮鉱業の趨勢』からは、道別、品目別にデータが得られないため仮推計である。)
(5)解放後の生産統計に接続する試みとして、『韓国統計年鑑』からえられる品目別生産数量を利用して1935 年価格表示の実質額(1950~61 年)の推計が検討された。