本稿では、『全国消費実態調査』の個票データを用いて所得不平等の実態と所得税の所得再分配政策の評価を行った。分析の結果、第一に、長期的に所得不平等が拡大しており、また所得不平等の拡大は若年・中年層において観察されることがわかった。第二に、税制改革の所得再分配効果として、1984年以降課税後所得の不平等が拡大していることが明らかになった。すなわち、所得税制の再分配機能はこの間大きく低下してきたことが明らかである。第三に、年齢別に見ると高齢層の再分配機能が強いことがわかった。若年層では、層内での所得格差が小さく、再分配機能は働かないが、高齢層では所得格差が大きく、そのために再分配効果も大きい。