昭和恐慌からの農村復興期における農家の資産蓄積行動
―農林省第3期農家経済調査パネルデータによる分析―

草処基
丸健
高島正憲

March 2012

Abstract

本稿は、1931年から1941年にかけて農林省が行った農家経済調査から抽出した個票データをパネルデータとして利用し、当時の農家世帯の資産蓄積行動についての試論的分析を行う。分析期間は昭和恐慌によるショックからの回復期にあたり、農家は回復する農家余剰を各資産にどのように配分するかという問題に直面していた。分析の結果、経営面積は、先行研究が指摘するように2町歩程度に収斂する傾向にあったが、主に世帯構造の変化に合わせて調整されており、農地の所有構造には影響されていなかった。また、現金・準現金、動物、現物などの比較的流動性の高い資産の蓄積を重視し、固定性の高い資産への投資には積極的ではなかった。その背景に、農家の予備的貯蓄行動があった可能性が指摘された。

Full text

PDF Download (PDF: 2.3MB)