空間編成からみたアンマン都市社会:
2008年アンマン世帯調査報告

加藤博
臼杵悠
岩崎えり奈

January 2013

Abstract

ヨルダンの首都アンマンは総人口の約4割を占める。アラブ世界は基本的に都市社会であり、首都は突出した存在である。首都は国や社会の縮図であり、アラブ諸国の首都は共通した社会問題を抱えている。アンマンはかかる意味での典型的なアラブ国の首都であるが、その突出性にはほかのアラブ国の首都とは異なった特徴がある。それは、1946年の建国(独立)以来、国内におけるマイグレーションのほか、中東和平の紆余曲折の只中にあって、戦争や紛争のたびに外から難民、移民が流れ込むことになったことである。そのため、国家のかじ取りには、まことに厳しいものがあるが、国内外の厳しい状況下にありながらも、ヨルダンの経済は近年において発展をみており、首都アンマンも急速に市街を拡大している。しかし、アンマンの都市社会についての統計データに基づく実証研究はほとんどない。あったとしても、アンマン全体についてのものであり、アンマンの都市社会内部に踏み込んだ研究はない。そこで、本ディスカッション・ペーパーでは、2008年に独自に実施した世帯調査のデータに依拠して、これまでの特異な歴史を反映したアンマンの発展を跡づけ、これからも変動著しいであろうアンマンの将来をフォローする起点として、アンマンの社会経済状況に関する基礎的な情報を提供する。その際、分析単位を「地区」(liwa')に設定し、アンマン都市社会をその空間編成と内部構造の変化を通して明らかにする。内外のマイグレーションに基づくアンマンの歴史的な発展の特徴は、「地区」の構成と構造に色濃く反映されていると思われるからである。データの分析の結果、アンマンの「地区」がいくつかの範疇に分類できることが明らかとなった。

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