本論文では、若年者の労働供給の賃金弾力性のうち、エクステンシィブ・マージンの弾力性を日本のデータを用いて推定した。本稿で想定している理論モデルでは、世帯所得と労働供給行動との間で同時性がある。そのため、世帯所得の内生性を考慮することで、より信頼性の高い賃金弾力性の推定値を得た。世帯所得の内生性を考慮せずに推定すると、賃金弾力性は過大に推定される。世帯所得の内生性を考慮したうえで推定されるエクステンシィブ・マージンの弾力性の推定値は0.06である。また、男女別では、女性のほうが男性より高いことが分かった。また学歴別では、低学歴者ほど賃金弾力性が高かった。ここで得られた賃金弾力性は、サンプルを労働市場参加者に限定したときに得られる賃金弾力性とほぼ等しく労働市場の摩擦の大きさを示唆する結果を得た。