親の経済力が与える若年失業者への影響

坂本和靖

April 2013

Abstract

日本では、1990 年代から2000 年代初めまでの間、若年者の失業率は高かった。1993 年から2002 年までの10 年間の間に若年者(30歳未満)の失業率は4.7%から9.8%と2 倍以上も上昇している。しかしながら、玄田[2001]でも触れられているように、当時若年者の失業率は(中高年者と比べて)高かったにもかかわらず、大きな社会問題とならなかった。その理由の一つとして、親からの支援が手厚いことが挙げられる。本稿では、親からの支援に注目し、親の経済状況が子ども(未婚者)の離転職行動、また求職行動にどのような影響を与えているかについて考察を行った。

前半部分では、親の所得階層別の離転職理由、求職意欲、離転職前後の親からの所得移転などを記述統計から考察した。その結果、親の所得が高いほど失業後の生活費を親からの支援に頼りがちとなり、親の所得が高いほど求職意欲が低いことなどが確認された。後半部分では、親の所得が子どもの再就職確率に与える影響について推計を行った。ここでは、親の所得と子どもの再就職確率との双方に影響する、内生性の問題を考慮するために、Manacorda & Moretti [2006]に倣い、年金制度改革(年金支給年齢の上昇)を操作変数として用い、再就職確率を推計した。その結果、親の所得が高いほど(子どもへの所得移転が多いほど)求職活動は活発ではなくなり、また再就職確率も低いことが確認された。

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