October 2008
本論文では、研究開発投資がTFP上昇率にどのような影響を与えるのかについて、従来多くの研究で使われてきた企業の財務データに含まれる研究開発投資額と、より信頼できると考えられる科学技術研究調査報告個票の研究開発投資額、2 つのデータを利用して、それぞれ回帰分析を行い、結果を比較した。これにより我々は以下の結果を得た。第一に、研究開発投資は、いずれのデータや推計式を使っても、TFP上昇率に対して統計的に有意な正の効果を持った。第二に、産業別、時期別に分割して推計しても、研究開発投資は有意な正の効果をTFP上昇率に与えたことには変わりなかった。ただし、時期別の効果には大きな違いがなかったのに対し、産業間では研究開発投資の効果は大きく異なった。これは、産業内の技術機会などの差が、研究開発投資のTFP上昇効果を左右している可能性を示唆する。第三に、研究開発を性格別に分けた場合、開発研究と応用研究がTFP上昇率に与えた効果は高く、非常に安定的な効果が計測された。一方、基礎研究は電気機械産業のTFP上昇に大きく寄与したとの結果を得た。