November 2008
この論文では、サプライサイド、特に資源配分と生産性の視点から、1980-2000年代前半の日本の成長と停滞を概観した。「バブル経済」が崩壊した90年代初め以降の日本の経済成長率減速は、人口減少や資本蓄積中心の経済成長の限界、といった構造的な要因に加え、 TFP上昇率の下落にもかなりの程度起因していた。産業間の資源配分の推移の検討や企業・工場レベルのデータによる生産性動学分析の結果、90年代初め以降、産業間の資源配分変化や各産業内での企業間の資源配分非効率化によって、TFP上昇率が大きく引き下げられたとは言えないことも分かった。90年代初め以降の各産業内、更には各企業内でのTFP上昇率の減速が、マクロ経済全体のTFP上昇率減速の主因であった。資源配分の悪化が90年代初め以降の日本のTFP上昇減速の主因では無かったという、本論文の結論は、資源配分が日本でマイナーな問題である、ということを意味しない。日本経済の新陳代謝機能は諸外国に比べて、長期に渡って低迷している。また、仮に生産要素をその限界生産価値が等しくなるように産業間で再配分すれば、GDPをかなりの程度高めることができる。産業間や企業間の資源配分の改善は、日本の潜在成長率を高める上で、重要な課題であると考えられる。